1999年07月16日
冷静
鳩が車にぶつかる。そういう事が時々ある。運転手は顔を背け身をよじる。鳩は心臓が止まって死ぬ。ドコンッ、と音がする。
それを思い出した。何かがバウンドした。もう一度バウンドするのが見えた。
500メートル手前から見えていた。沿線に止まった車から子供が身を乗り出し手を伸ばし、その遙か彼方まで白く息が立ち上っている。踏切付近でどこからか光が漏れだしていて、闇の中、シグナルの赤い、くすんだ光がオーロラのポストカードみたいで、見とれた。それから、ちゃんと避けれると思ったし、その筈だった。
何かがバウンドし、砕け、もう一度バウンドする。
車輪と線路が摩擦で溶けそうになり、湖の対岸まで音が響く。それでも誰も姿を現さなかった。娘だかババアだか、どっちにせよこういう場合、置き去りにされたいに決まっている。線路脇を小川が静かに流れていた。
ともかくも運転席に戻った。それからただの青信号のように、なるべく音を立てないようにゆっくりとスピードを上げていった。
怖くはなかった。ましてパニクッたりもしなかった。逃げ切れる。最悪シラ切り通せる。
そう考えていた。列車を走らせながら。
500メートル手前から見えていた。沿線に止まった車から子供が身を乗り出し手を伸ばし、その遙か彼方まで白く息が立ち上っている。踏切付近でどこからか光が漏れだしていて、闇の中、シグナルの赤い、くすんだ光がオーロラのポストカードみたいで、見とれた。それから、ちゃんと避けれると思ったし、その筈だった。
何かがバウンドし、砕け、もう一度バウンドする。
車輪と線路が摩擦で溶けそうになり、湖の対岸まで音が響く。それでも誰も姿を現さなかった。娘だかババアだか、どっちにせよこういう場合、置き去りにされたいに決まっている。線路脇を小川が静かに流れていた。
ともかくも運転席に戻った。それからただの青信号のように、なるべく音を立てないようにゆっくりとスピードを上げていった。
怖くはなかった。ましてパニクッたりもしなかった。逃げ切れる。最悪シラ切り通せる。
そう考えていた。列車を走らせながら。
Posted by たおまさ at 17:19