1999年06月26日

村下孝蔵よ安らかに

 青春は見送るもの、と先日書いたが、24日、青春の巨匠・村下孝蔵が逝った。46歳という若さで迎えた早すぎる死だった。

 僕の村下との出会いは、丁度中学入学の年に大ヒットした「初恋」である。人生で初めて経験する「別れと出会い」である卒業・入学を経て、幼いながらセンチメンタルな気分に浸っていた僕の心に、それは鋭く入り込んできた。大胆なコード展開に載せて紡がれる叙情的な歌詞。その頃はまだリアルではなかったものの、大人から突きつけられた「初恋」のイメージに、きっとそんなものなのであろう的感覚が僕の胸を熱くしたものだ。時を経ずに僕は、親に黙って安物のギターを買った。親は驚いたがうるさく言わなかった。

 思い返せば面白いもので、中学の頃の僕はシャイだった。

 当然のように恋を経験したが、思いを伝えられるはずはないわけで、僕は、当時出初めの50度数のテレホンカードを小遣いをはたいて買った。このカードを使い切るまでに告白しようと決心したのだ。自宅からわざわざ近所のたばこ屋まで行って掛ける決死のラブコール。しかしついに思いは果たせなかった。岡本太郎デザインの使い切ったテレホンカードがきっと実家に残っている。今から考えれば、それは面白いギャンブルのようなものだった。しかし真剣だったのだ。

 浅い夢だから今も離れない・・・今になってその通りだと思う。

 僕は村下を当時好んで聞いていたわけではないが、「初恋」だけは確実に、僕の青春の1ページを彩っている。

 大学時代、倉敷で開かれた「七夕コンサート」で、一度だけ村下を見たが、それっきりである。「初恋」以外の曲もよく憶えていない。しかし、それでいいのだ。村下は時代に歌を残したではないか。冥福を祈りたい。

初恋 / 村下孝蔵-1983
※後に、「バックコーラスは浜田省吾ではないか?」との噂が流れたが、真実は定かではない。そういえば、曲調もなんとなくハマショーっぽいかなあ(^-^; まあじっくりと聞いてみて下さい。


Posted by たおまさ at 15:34