1999年05月13日

毒入りカレー事件初公判

 和歌山市の毒物カレー事件と保険金詐欺事件で、殺人と殺人未遂罪などに問われた元保険外交員の主婦・林真須美被告(37)と詐欺罪に問われた夫の健治被告(54)の初公判がきょう和歌山地裁で開かれた。検察側は冒頭陳述で、ヒ素混入直前に真須美被告は「近所の主婦らの対応に反感を抱き激高した」と指摘した。

 またカレーに混入されたヒ素は最大で1000人分の致死量に当たる100グラム以上で、夏祭りで出されたカレーを食べる可能性がある住民を狙った無差別殺人と断定した。

 検察側はヒ素混入の動機を特定しなかったが、事件直前の同被告の心理状態を浮かび上がらせ、事件当日の主婦らとのやりとりを契機に地域への恨みが噴き出した衝動的犯行と事件の構図を描き出した。

 公判後、和歌山地検は「間接事実があり、これで十分」と述べ、これ以上動機を特定しない意向を示した。

 冒陳によると、真須美被告は事件当日の正午ごろ、カレーを調理していた民家ガレージに姿を現した際、その場にいた近所の主婦ら6人は、真須美被告のうわさ話をしていた。真須美被告の姿に、ガレージ内は一瞬静まり返り気まずい雰囲気になった。真須美被告は、その場の主婦に祭りで使う氷のことを尋ねたが「そんなん班長の仕事やろ」と言われたため、いったん帰宅。その際の真須美被告の心境について「主婦らの対応ぶりは自分をあからさまに疎外するものと受け止めて、反感を抱き激高した」と再現している。

 事件当日までの真須美被告の行動については、マージャン仲間の知人らに新たな生命保険を契約、祭り当日に自宅で行われるマージャンに来るよう誘っていたとしたが、中止の経緯や真須美被告がいつ中止を知ったのかについて冒陳は触れなかった。

 また検察側は真須美被告が健治被告について、複数の知人に「死ねばいい」などと話していたことや、1997年2月に急性ヒ素中毒で命が危ない状態にあった健治被告本人に「死ね」と言ったことなど、夫に対する殺意についても言及した。

 次回公判は来週月曜日(17日)午後1時半から開かれる。

林被告夫婦の意見陳述要旨
【林真須美被告】

健治被告と(共謀)の詐欺事件について
 本当と違うことを保険会社に報告して不正に金を受け取ったことは間違いありません。

無職男性(36)シロアリ駆除会社の元従業員(37)健治被告に対する殺人未遂、詐欺について
保険会社から保険金を受け取ったことは間違いありませんが、不正な方法で受け取ったのではありませんし、ヒ素を飲ませたこともありません。

ヒ素入りカレーによる殺人、殺人未遂について
 このことには私は全く関係しておりません。

【林健治被告】
 詐欺事件については、事実と異なることを保険会社に報告して、保険会社から不正に金を受け取ったことに間違いありません。ただ、私は具体的な保険金請求手続きにほとんど関与しておりませんので、詳しいことはよく分かりません。

検察側冒頭陳述骨子

林真須美被告は健治被告と結婚後、常に身近にヒ素が存在し自由に取り扱える状況にあった。
真須美被告は保険金目当てで健治被告や知人にヒ素を飲ませる殺人未遂行為を繰り返していた
真須美被告は夏祭り当日の準備中、近所の主婦らの対応を疎外されたと感じ、反感を抱き激高していた
同被告は一人でなべの見張り中、自宅に隠し持っていたヒ素を紙コップに入れて持ち込み、カレーを食べる可能性がある者を無差別に殺害する意図で、少なくとも100グラム以上のヒ素をカレーなべに混入した


Posted by たおまさ at 14:32