1999年03月28日

俺はお前の兄貴じゃない

 街のゴロツキはその日ふらりと家を出た。何処行く宛てもない。一銭橋を渡り、街へ。ふらりと入ったゲームセンターの時計で今正午だと気付く。あ、高校時代と一緒だ、一緒の事してるよ、なんて思う。

 小さなドブ川に懸かった橋の上で高校時代の友人と会う。「あ、今嫁さんを送ったところなんだ」ちょっとサ店に入るか。あすこの脇道から下に降りる階段の先にある汚いトビラ。変わってないねえ、なんて言いながら一緒に入ったら中はガラリと模様替えされていた。

 ゴロツキはいつもアイスコーヒーしか頼まない。飲み終わった頃、「そうそうお前は昔から俺逹の兄貴みたいな処があったよ。」「そうか、昔からおせっかい焼きだったよね」「違う違う、なんちゅうか、頼れるというか」「ふうん、そうでもないんじゃないの」思わぬ処で自分を見失いそうになるゴロツキ。

 別れてから独り思う。ああ、あの頃は皆一緒だったなあ、何処行くにも悪さする時もつるんでた。しかし今はどうだ、何故か独りぼっちじゃないか。状況はあの頃と同じじゃない。しかし自分だけ同じ。タバコを買おうと思って自動販売機の前で立ちつくす。タメイキ一つ。

 仕事仲間からの呼び出しのベル。ハッと我に返って大きめの声で応対。戻る場所はない。


Posted by たおまさ at 05:16