1999年01月05日

月に魅入る

 今年に入ってからずっといい月が出ている。最近なぜか気になっている。

 大昔から人は月に魅入られてきたのだが、それは何故だろう。ふと考えた。

 僕が今見上げている月はまるで、妖しい光沢を湛えた黒いベルベットの上に置かれた丸い鏡のようだ。輪郭がはっきりしていて表面のシミまでくっきり見える。やけに近くに感じて、手が届きそうな錯覚に陥りそうになる。

 僕に全てを曝しているような月だが、しかしよく考えてみろ、球体のくせに常に同じツラをこっちに向けていて、裏側を見せたことはない。そして、近そうに感じるんだけど決して手が届くことはない。

 筋骨隆々の太陽神に対して、月がしなやかな女神に例えられてきた理由が少し分かった気がした。

 しかしなんだな、月にロケットで辿り着こうと考えた奴は偉いな。月は遠くて辿り着けないと誰もが思っているそんな中、物を爆発させて、その反動で月まで飛んでいこうってんだから。関空から羽田を横に飛ぶというなら、月までは縦だもの。無茶だわいかにも。

 それでも人は月をモノにしたくて無茶をした。これ考えた奴って、研究とか名誉とかそういうもんじゃなくて、ただ行ってみたかった、モノにしたかった、多分それだけだったと思う。


Posted by たおまさ at 14:03