1998年06月30日

潜水艇事件その後

朝鮮日報と中央日報のサイトから拾ってきた情報

潜水艦ではなく潜水「艇」。どう違うかよく分からないけど。

潜水艇乗組員は朝鮮労働党作戦部313連絡所(所在地・元山)の所属。

航海日誌によると20日午後6時30分に元山付近の黄土島訓練場を出発、21日午後8時30分韓国沿岸に到着。同日午後10時に工作員3名が出発し、2時間後の22日0時3分に任務を遂行して艇に戻った。

韓国側の捜査によれば、侵入目的は韓国内に定着している工作員との間で物資などの受け渡しをするための連絡用ポストの設置。なぜそんなものが必要かというと、工作員が海岸で潜水艇と待ち合わせしたりすると発見される危険性が高いから。

ポストは捜索中だが未だ発見されていない。艇内からスコップが出てきたり工作員の衣服から砂が検出されたことなどから、海岸近くに埋めてきたものと推測される。

帰還中の22日午前3時10分から午後2時まで待機していたのは艇の故障によるもの。

航海日誌には「22日午前3時10分以後 乗務員の呼吸が困難で蛍光灯が黄色く見える」などと書かれていた。

それ以上潜伏していることができなくなり、最短距離で公海上に出ようとしたり浮上航行を試みたりしているうちに魚網に掛かったらしい。

艇内で見つかった韓国製飲料ボトルは商標が色褪せ、製造日時も消されており、相当古いものだった。ペットボトルは何度も洗って再利用しているとポリマーが溶け出すという話もあるので気を付けてね。

韓国軍の艦艇に包囲された直後の22日午後4時32分から午後5時15分の間に脱出をあきらめた工作員が乗務補助員を射殺して集団自決したらしい。

韓国軍がその場で突入せずに基地まで曳航したのは不測の事態を避けるため。最初に潜水艇が発見された現場は水深が1000mもあり、自爆して沈没されると引揚げが非常に困難。

韓国政府は今回の事態を武力挑発よりも弱い「侵入挑発」と規定。韓国側に人的被害が出れば武力挑発に該当する。

今回は武力挑発ではなかったので、金大中政権の対北基本方針の一つである「武力挑発は許さない」という項目には抵触しない。政府としてはこれまで通り政経分離原則に基く経済交流などの宥和政策を継続強化する方針らしい。

とはいうものの例によって野党ハンナラ党が金大中政権の対応を批判しており、国会などで延々と繰り広げられる泥仕合の材料になる可能性も。

米軍は潜水艇の侵入を事前に察知、韓国政府との間で緊密に連絡を取り合っていたらしい。艇内から遺体が発見された時も韓国国防部より米国防総省の発表の方が早かったし。

米軍が捕捉していた潜水艇は複数あったらしい。網に掛かったのはその内の1隻。

捕獲された潜水艇を観光資源にするため、地元の束草市と東海市が誘致合戦を開始。束草市は自分の地域内で初めて発見されたという点を、東海市は同市の海軍基地に曳航されて調査中であることを強調、自分の所で展示すべきだと主張している。その後,工作員の上陸地点が束草市の海岸だったことも判明、誘致は束草市が有利か。

束草市は北朝鮮との間で観光旅客船を就航させる計画にも乗り気らしい。

ちなみに96年に潜水艦侵入事件が起こった江陵市は、潜水艦を誘致するために市民の署名運動まで繰り広げて誘致に成功、現在侵入現場の安仁津里に展示中。

 しかし北朝鮮の工作員のみなさんは行動パターンがハリウッド映画に出てくる忍者みたいでカッコイイですね。ま、敢えて難点を挙げるなら今回の事件では銃撃戦が起こらなかったのが画竜点睛を欠いているのではないかと。前回96年の潜水艦侵入事件の時は「ウサギ狩り」などと称して大々的に掃討作戦を展開して韓国側にも死者が出るという盛り上がりようだったんですが。


Posted by たおまさ at 11:32