1998年05月29日

チャンネル

 ついさっき、店から男が連れ出されてからずっとその事が頭を離れない。違う通路をそれぞれ通ってきた3人組に、騎馬戦の行進みたいに取り囲まれて出ていったのだ。

 カウンターの男は目が合うかと思った瞬間、とっさに振り向いてフライヤーの油を固めるフリをしていた。
 背中越しに男が何か叫ぼうとして息を吸い込んだのが解った。

 残された客は私以外に2人。ひとりは「ギャロップ」を、あとひとりは「ブーン」を手に取っている。
 きっと誰の瞳の奥も涙が誰にも見せないようにして、それでもずっと下の方まで流れ落ちている。

 それでは天気予報です、みたいに、たった一言で世界が変わればいいと。


Posted by たおまさ at 11:16