1997年08月17日

3回戦、智辯和歌山が福岡工大附属に大勝

 2回戦の21安打に続き、この日も19安打と打線爆発の智辯和歌山が大勝し、夏の大会で初の8強入りを果たした。

 3回に清水の左翼2塁打などで3点を先制した智辯和歌山は、5回に中谷の適時2塁打と木戸の中越え本塁打で3点を追加。6回にも4連打で2点を加えるなど、2試合連続の2桁得点。最後まで攻撃の手を緩めなかった。左腕藤谷は7回途中で降板したが、速球主体の強気の投球で4安打に押さえきった。ただ内野陣は3失策と、軽率なプレーが目立った。

 福岡工大附属はいずれも失策絡みで5回に1点、7回には3点を返した。だが、序盤に雜な攻めで好機を潰したのが痛かった。

 2試合で80打数40安打29得点。福岡工大附属の本格派左腕、小椋をも打ち碎いた智辯和歌山の打線の勢いはもう止まりそうにない。

 昨春の選抜大会凖優勝の時は、决勝も含めた5試合で得点はいずれも4点以下。原動力はやはりエース高塚だった。ところが、4日連投となった決勝で大黒柱は力尽き、頂点には立てなかった。その反省から、高嶋監督は「高塚抜きでも勝てるチーム」を目指した。 高塚は疲労からフォームを崩し、右脇腹、右肩と相継ぐ故障で、本来の球威が戻らない。昨夏は甲子園切符こそ手にしたが、高塚の登板のないまま初戦敗退。エースの抜けた穴は余りにも大きかった。

 新チームには主力メンバー6人が残ったが、高塚の復調のめどは立たず、高嶋監督は児玉、藤谷、中山の3投手に加え、中学時代に投手経験のある4番清水も投手スタッフに加える苦しい状况。だが、逆境がナインの結束を固めた。「もう一度高塚を投げさせてやりたい、と精神的にまとまった」と高嶋監督は言う。

 絶対的なエースを欠く状况に変わりはない。「シャットアウトはもう考えられないから4、5点以上は打線が取らなければならない」。速球に打ち負けず、しっかり叩きつける打撃練習を積んできた。4安打の喜多は「練習通り打った結果。いい球を逃さず打った」と胸を張る。

 夏は初のベスト8入り。昨年は高塚に頼りきりだった打線が破壊力を付け、中谷主将は「点を取られたら取り返す」ときっぱり。背番号1がいなくても勝つ強さを、智辯和歌山は身につけた。

 甲子園初登板した智辯和歌山の左腕・藤谷が、落ち着いたマウンドさばきを見せた。7回途中まで投げ、4失点だが自責点は無し。緩いカーブを上手く使い、的を絞らせなかった。「立ち上がりだけは気を付けた。1回の1死2塁を併殺で切り抜けたので波に乗れた」。エース高塚の穴を埋める力投に「自信が付いた。次もできたら投げたい」と話した。

 智辯和歌山の木戸はライナーでバックスクリーンに飛び込んだ本塁打に「入るとは思わなかった」と驚いた。前の2打席は三振と併殺打。好投手の小椋は打てないと感じ「三振するつもりで真っ直ぐを思い切り叩くことだけを考えた」という。

 初戦では単打、2塁打、3塁打を放ったものの、本塁打が打てずにサイクル安打は成らなかった。「ホームランなんかは打ちたくても出ないと思っていた」そうで、公式戦では2本目という一発に大喜びしていた。

 きょうの第2、第3試合では、姉妹校の智辯学園と智辯和歌山が続いて登場した。藤田照清校長ら両校に跨る応援団約300人が、三塁側から一塁側へ慌ただしく移動した。

 第六日にも同じケースがあり、この日が2度目。藤田校長は「移動は大変ですが、スタンドの両方から見るのも良いものですね」と笑顏を見せた。ただ、智辯学園が敗退したため、大移動もこの日で最後。藤田校長は「その分勝ち進んだ和歌山に頑張って欲しい」と話していた。

 「公式戦で8失点は初めて」。福岡工大附属の2年生エース、小椋は1本塁打を含む12安打の6回途中降板に悔しさをにじませた。

 「打ち取ったと思ったら内野安打。投球リズムがいつの間にか速くなり、打者のタイミングで投げていた」という。押さえよう、との力みで「ボールを投げようとしたのに、ストライクゾーンに入り、打たれた」とも。課題に直球をもっと速くすることを挙げ、「来年また甲子園に来ます」と語気を強めた。


Posted by たおまさ at 03:50