1997年07月05日

匿名に疑問も 各国で異なる少年事件報道

 小六男児殺害事件で容疑者少年の顔写真報道が波紋を広げているが、アメリカやインドでは少年の凶悪犯罪が実名で盛んに報じられる一方、欧州などでは実名報道が法律で規制されているなど、国によって実状は様々なようだ。

 今年5月、アメリカ・ニューヨークで15歳の少年と少女が中年男性を殺害した事件では、新聞、テレビとも2人の実名を、顔写真入りで大々的に報道。少女が冨裕層の娘であることなど家庭環境を含めて詳しく伝え、高級紙ニューヨークタイムズも連行される写真をそのまま掲載した。

 ニューヨークタイムズは今回の日本の事件について、マスコミ内部では少年の身元が知れ渡っているのに、読者は知らされていないとの趣旨の報道をしており、日本の報道姿勢に疑問を投げかけている。

 イランでも、少年事件を匿名で扱うよう定めた法律はない。今年1月、16歳の少女が同年齢の少年と共に、少女の弟と妹を殺害した事件では、新聞に2人の実名や法廷写真が掲載された。

 インドでは12歳以上で刑事訴追されるが、それ以下の少年でも実名報道が当然視されている。

 一方、ドイツでは、基本的に匿名報道。4日付の大衆紙ビルトは、16歳と20歳の娘が両親を殺害した事件を大きく伝えたが、名字などは伏せて本人が特定できないよう配慮した。

 また、イタリアでも法律で18歳未滿の犯罪者の実名報道は禁じられている。イタリアで「少年犯罪」と言えば、マフィアが麻薬売買や窃盗などに誘い込むというイメージが強く、「社会や大人にこそ問題がある」との考え方が根強いという。

 イギリスでは、少年法などにより、18歳未滿の犯罪者の実名や写真報道は捜査段階も裁判の審理段階でも出来ない。しかし、有罪評決がでた時点で判亊が報道規制を解除する権限を持っており、1993年に2歳の幼児を誘拐して殺害した11歳の少年2人(犯行時は10歳)の写真、実名報道が許可された例がある。

 国ごとに価値観が違うから、報道の有り方が違って当り前なのだが、日本は未成熟であるとの観点から見れば、各対応は大いに参考になる。今回の事件は我々に何を残すのかと言えば、一番大きな点はここではなかろうか。


Posted by たおまさ at 01:01